『大切な人をなくすということ』を読んで

ステイホームのこの時期に、以前読んだ本をもう一度読み直しています。

はすの会でしばらくの間、皆様に会えず、どう過ごされていらっしゃるかと案じつつ本棚のこの1冊に手を伸ばしました。薄くて口語調の文体が多く読みやすい本です。

はすの会の全スタッフが共に学んだ「上智大学グリーフケア研究所」の特任所長である高木慶子先生の著書です。われわれスタッフは、愛する人を喪うという辛く苦しい方にせめて心だけでも寄り添わせてほしいと願う思いをもっておりますが、高木先生はこれまで30数年に亘ってそれを実践されてこられました。

その著書の1部分ですが、ご紹介させて下さい。

阪神・淡路大震災でお子さんを喪ったお母さん方とお話をされ、「周囲の人からしてほしかったことはありますか」と高木先生がうかがったそうです。その時の声は次のようでした。

「とにかく、そっとしておいてほしかった」

「死者のために祈ってほしかった」

「ひとりになりたかった」

「思いやりをもって見守ってほしかった」

「話を聞いてほしかった」

「やさしく接してほしかった」

「どうしてもらいたいか、よくわからなかった」

何か言葉をかけようとするよりも、励まそうと気負って接するよりも、「静かにそばにいる」ことの方が大切であること、心ある第三者がそばにいることが大切であることを感じられたそうです。(『大切なひとをなくすということ』PHP研究所 2011年 より)

新型コロナウイルス拡散による緊急事態のなか今は皆さんと直接会ってお話をすることができない状況ですが、「はすの会」われわれスタッフがあなたにとって、心ある第三者としてあなたを思い、苦しさ、辛さ、理不尽さに押しつぶされそうになりながらそれでも日々がんばっていらっしゃるあなたのことが気がかりでいることを忘れないでいただきたいのです。

この書のあとがきに次の言葉が記されていました。

作家の林芙美子氏の「花のいのちは短くて 苦しきことのみ多かりき」

苦しみ多き人生を生きる者同志として、共に支え合っていければと心から願ってやみません。(M.S.)